こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、東京・天王洲で開催されている「バンクシーって誰?」展です。
■バンクシーって誰?展
誰もその姿を見たことがない、神出鬼没のアーティスト、バンクシー。
世界中のいろんな場所に現れては、観る者の心をグサリと突き刺すアートを描いてきました。
そんな彼が作品を描くのは、画布のキャンバスだけではありません。
街角の壁や建物の側壁、ときにはストリップ劇場のシャッターまでが、彼のアート・キャンバスになります。
今回、そんなストリート・アーティスト、バンクシーの魅力をたっぷり楽しめる展示会がやって来ました。
それが、 WHO IS BANKSY?「バンクシーって誰?」展。
バンクシーが世界中の壁に「投下」してきた代表作品を、できるだけ実際のスケール感で再現。
現地で作品を見るような疑似体験ができる、新感覚の没入型展覧会です。
それはまるで、映画のセットのような美術展
東京・天王洲で開催されている「バンクシーって誰?」展へ。
新感覚の展覧会から、バンクシーの怒りとユーモアに満ちたメッセージを感じ取りましょう。
イベント名:「バンクシーって誰?」展
期間:2021年8月21日(土)~12月5日(日)
時間:11:00~20:00(金・土・祝前日は21:00まで)
会場:寺田倉庫G1ビル(東京・天王洲)
チケット(土日祝は日時指定):
(平日)大人2000 円、大学・高校生1800円、中学・小学生1300円
(土日祝)大人2200円、大学・高校生2000円、中学・小学生1500円
■ハクション!
「バンクシーって誰?」展。
映画のセットのようなアート展なので、全編を体感していただくのがおススメですが、今日はその「予告編」として、見どころをいくつか紹介しましょう。
まずは、入場してすぐの所にある作品「Aachoo!!」(2020 Bristol, UK)。
2020年12月に発表されたばかりの作品。スカーフをかぶったおばあさんが、盛大にくしゃみをしています。
本作のタイトル 「Aachoo!!」 は、日本語で「ハクション!!」という意味。
マスクをつけないことで飛沫やウィルスを拡散することへの警鐘でしょうか…。入れ歯も飛んでますね(苦笑)。
この絵が描かれたのは、バンクシーの故郷ブリストルにある急な坂道ヴェール・ストリート沿いにある家。
老婆のくしゃみで家が傾いたように見えますね…。怒りとユーモア。まさにバンクシーの面目躍如です。
■ピアスの少女
同じように、新型コロナへの警鐘というべき作品があります。
それがこちら。「Girl with a Pierced Eardrum」(2014 Bristol, UK)。
もともとは、2014年にバンクシーが描いた、フェルメールの名作「真珠の耳飾りの少女」をオマージュした作品。
耳飾りを、既存の黄色い警報器で代用しています。このインスピレーションってすごいな…。
その後、2020年4月に医療用マスクが描き加えられているのが見つかりました。
バンクシーからこの絵についての発表はありませんが、なんともタイムリーですね。
このように、既存の構造物をアートに活用している作品が他にもあります。
「Hammer Boy (Better Out Than In)」(2013 New York, USA)が活用したのは、道路に設置されている消火栓。
それを少年がハンマーでたたき割ろうとしている姿を描きました。
こちらは、プロジェクト中、唯一完全な形で残っているスプレーアート。現在も人気の撮影スポットになっています。
■部屋に象がいる
続いて、この展示会ならではの貴重な作品。
「Whitewashing Lascaux(The Cans Festival)」 (2018 London, UK)。
ロンドンのウォータールー駅近くのトンネルに描かれたこの作品。
誰かに上書きされて今は存在しません…。そんな作品も資料をもとに当時の姿を再現しています。
さらに、こちらも「実際のスケール感で再現」するというコンセプトならでは。
「Barely Legal」(2006 Los Angels, USA)。実物大の象のオブジェが展示されています。
実際にアメリカで開かれた個展では、ダマスク柄にペイント(動物に無害なスプレー塗料を使用)した本物のインド象が展示されました。
英語で「Elephant in the room」(部屋に象がいる)とは、「明白な問題について、誰も触れようとしない」という意味。バンクシーならではの強烈な風刺ですね…。
象だけでありません。強烈な風刺の効いた猫もいます。
「Glant Kitten」(2015 Gaza, Palestine)。この作品が描かれたのは、イスラエルの軍事攻撃により廃墟と化したガザ地区…。
「SNSではガザの悲惨な現実より、もっぱら子猫の写真ばかりが見られている」。
バンクシーは皮肉たっぷりに、廃墟の壁に愛くるしい子猫を描きました。この絵は大きな反響を呼び、国際的な支援団体の同地区に対する援助の動きを引き出しました。
■THERE IS ALWAYS HOPE
平和へのメッセージは、バンクシー作品の大きな特徴です。
同じくパレスチナの壁に描かれたのは、有名な「Love Is In The Air」(2003)です。
描かれているのは、石ではなく花束をイスラエル側に投げ込もうとするパレスチナの若者。
どんな変革も平和的手段で達成されなくてはならないという、彼の強いメッセージが込められています。
この作品と同様、バンクシーの代表作と言えるのが、「Girl with Balloon」(2002)です。
オリジナルは、ロンドンのテムズ川沿いにある階段に描かれました。現在は市の職員によって塗り直されてしまっています。
階段の後方には、「THERE IS ALWAYS HOPE」(希望はいつもある)というメッセージが…。
この名作が、ほぼ実物大で再現されているのは胸アツ。このメッセージも、今の時代に響きますね…。
他にも、バンクシーの名作がいっぱい。問題作も惜しげなく展示されています。
いろいろと批判も多いアーティストですが、彼が世界中の壁に投下した愛と平和と怒りのメッセージは、今もたくさんの人々の心を動かしています。
THERE IS ALWAYS HOPE…。明日も精いっぱい、生きていこう。
ありがとう、バンクシー! ありがとう、「バンクシーって誰?」展