こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、岡田准一主演の映画「関ヶ原」をレビューします。
■雨の日シアター
このところ、毎週末、雨模様で、街歩き好きにはつらい日々が続いています。
本当は、秋空のもと、朱く色づいた木々の下を、好きな音楽を聴きながら、ぶらり散歩したいんだけどね。
でも、そんな雨の日だからこそ、屋内で楽しめることもできます。
その一つが映画。昔からエンターテイメントの定番にして、休日の友。勝手に「雨の日シアター」と名づけました。
今日は久々に「雨の日シアター」に出かけて、どっぷり映画にハマってきました。
その映画は、原田眞人監督・脚本、岡田准一主演の「関ヶ原」です。
■あらすじ
幼くして豊臣秀吉に才を見出され、秀吉の小姓となった石田三成。
成長して大名にまで取り立てられた三成ですが、主君・秀吉の苛烈な統治のあり方に次第に疑問を覚えるようになります。
三成の理想は、その旗印とした「大一大万大吉」に込めたとおり、「義」を重んじる世の中をつくることです。
その実現に向けて、島左近や伊賀の忍び・初芽らとともに、強大な徳川家康と対峙していくことを決意します。
その徳川家康は、自らの天下取りの野望を実現すべく、言葉巧みに秀吉恩顧の武将に取り入っていきます。
秀吉が逝去すると、半ば公然と豊臣家の弱体化の動きを進めます。その矛先は、秀吉の正室ねねの甥・小早川秀秋にも向けられました。
そして迎えた運命の1600年。
家康が上杉討伐に向かうと、三成は、上杉家家臣・直江兼続や大谷刑部らとともに挙兵。
三成の西軍、家康の東軍が、天下分け目の戦いに動き出します。
ときは1600年9月15日。決戦の地は関ヶ原。
「正義」を貫く三成と「野望」に燃える家康。運命をかけた戦いの行方はいかに…!?
■感想
本作は、司馬遼太郎の歴史小説「関ヶ原」を原作とした戦国大河ドラマです。
「関ヶ原」自体は、司馬遼太郎はもちろん、数々の作品で扱われているので、結末を含めて目新しいものはないでしょう。
ただ、本作で描かれる石田三成は、主役ゆえの美化はあるとはいえ、これまでの小役人的なイメージを一新するものとなっています。
どこまでも純粋で、どこまでも正義を貫く武将、石田三成…。
その生き方を象徴するのが、三成の旗印「大一大万大吉」。読み方は「だいいち だいまん だいきち」です。
その意味は「皆はひとりのために、ひとりはみんなのために」。「一人が万民のために尽くし、万民が一人のために尽くせば、誰もが幸福な世の中になる」という意味です。
人の心も荒んだ戦国の世に、あえてそんな理想を追求する義の武将を岡田准一さんが好演しています。
「永遠の0」の熱演も記憶に新しい。もうジャニーズ・アイドルとは思えない、男惚れするような俳優に成長しました。
一方、こちらもこれまでのイメージを一新するのではないかと思われるのが徳川家康。
老獪で狡猾、天下取りのために権謀術数を尽くす悪役として、大いに存在感を示します。
その圧倒的な存在感を醸し出しているのが、徳川家康を演じる役所広司さん。
特殊メークによる太鼓腹も披露して、なんとも憎憎しい醜悪な家康を演じきっています。
■そしてラストシーンへ
その他にも、この映画は脇を固める俳優陣の名演が光ります。
秀吉を演じた滝藤賢一さん、島左近を演じた平岳大さん、小早川秀秋を演じた東出昌大さんなど、それぞれの武将の生き様がほとばしるような快演でした。
ヒロイン初芽を演じたのは、時代劇が初挑戦という有村架純さん。
三成に仕えるくの一を演じましたが、アクションシーンもあり、クールな美しさを魅せてくれました。
戦国武将の戦いの影で、忍び同士の戦いも描かれるのですが、個人的にはこちらは割り切っても良かったかなと思いました。
何しろ、司馬遼太郎さんの上・中・下巻合わせて1577頁にも及ぶ原作を、上映時間149分に詰め込むのだから、そりゃぁお腹いっぱいになりますよね。
ただでさえ展開が早いので、武将たちの戦いにとことん没頭したかったってのが感想です。もちろん没頭はできるのですが、小早川秀秋の裏切りに至る逡巡はもっと見たかったような気がします。
ただ、そんな細かな不満すら吹っ飛ぶような、岡田・三成と役所・家康の見事な戦いでした。
たぶん見た人は、現代のいろんなものと重ね合わせたのではないでしょうか。
「大義」対「利害」、「心」対「力」、「理想」対「現実」…。
三成と初芽が交わす最期のシーンには、決して結果が全てではない真実があるように思いました。
雨の日は嫌いだけど、たまにはこんな雨の日シアターを楽しむのはいいかもしれません。
ありがとう、関ヶ原!ありがとう、雨の日シアター!
(映画「関ヶ原」予告編PV)
■基本情報
作品名:関ヶ原
監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎
出演者:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大、役所広司ほか
公開:2017年8月26日
上映時間:149分